三島由紀夫「金閣寺」を読んで
こんにちは。
前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまっていて、久しぶりの投稿です。
今回は三島由紀夫著の「金閣寺」について書いていきたいと思います。
三島由紀夫とは日本人であれば誰もがその名前を知っていることと思います。
私も以前から名前といくつかの有名な作品名、
また最後は自害して亡くなったということくらいは知っていましたが
実際に本を読んだことはなかったので
今回読んでみることにしました。
補足
内容に入る前に補足ですが、現在は三島の作品は電子版(kindleなど)では販売はしていないということです。
親族の意向によって、紙媒体の販売のみされているということらしいのでその点はお気を付けください。
内容
(ネタばれを含んでいる可能性がありますので、まだ読んでいないという方はお気を付けください。)
タイトルの通り、「金閣寺」をテーマにした小説です。
実際に1950年あたりに金閣寺が燃やされるという事件があり、
三島はその事件を背景に犯人がどのような人物であったのかということを
(おそらく想像で)小説にしたものです。
実際にこの犯人はそこの青年僧であり、犯行の動機として
「美に対する反感」と述べており、それに三島が刺激を受けて筆を握ったものです。
主人公の溝口は寺の息子でした。
幼いころからよく父親からいかに金閣寺は美しいものなのかということを聞かされており、あんなに美しいものはないという父親の話を聞いて、
主人公の中では「美」というものそのものが「金閣寺」である、というように考えるようになっていました。
もちろん金閣寺を実際に見たことはなかったのですが、
なにか「美」について考える時の絶対的基準、そして軸として「金閣寺」をおくようになっていました。
あるとき、父親に連れられて実際に金閣寺を見に行くことになるのですが、
目の前にしてみた金閣寺は自分が今までイメージしていた「美しいもの」とは違っていて、
主人公の中で「美」というものがある意味崩れてしまったとでも言いましょう。
父親の死後、両親の意向もあって金閣寺のお寺に入ってそこで弟子入りすることになるのですが、
徐々にそこに絶対的に、そして半永久的に存在している金閣寺に対して美しさというも見出し始めます。
そんな金閣寺であって戦時中の空爆によって一瞬にして壊れる可能性がある、
そしてその時は自分も空爆で死に、その金閣寺とともに終わりを迎えるのだ、
と考えることにある種のロマンを感じます。
しかし戦争が終わり、そんな考えもはかなく叶うことがないことに気づき、
主人公は、
永遠に存続し続けるであろう金閣寺を自分の手によって、
燃やそうと決心します。
小説は、実際に主人公が金閣寺を燃やし終えて煙草で一息するところで終わります。
感想としまして、
金閣寺を燃やそうという考えを理解するのは難しいような気がします。
ただ、主人公が自分の中にある理想の「美」というものを確固たるものにするための
唯一の方法だったということなのかもしれません。
全体を振り返って
三島由紀夫の作品を読んだのはこれが初めてでした。
まず第一印象としては、この作者は非常に鋭敏そして賢明であるということ。
書く文章が力強く、ある描写をするだけでもとても多くの方法によってそれを表現しているという点に感銘を受けました。
また、特に仏教的な考え方、またその用語が多く出てきて
知らない言葉が多かったということもあり、理解が難しいところも多々ありました。
この手の小説、
特に主人公が最終的に悪事を働く際(もしくは悪事を働いた後)に、
自分の美意識や、信念といったものによって、
自分の中での勝手な理論を積み立て上げて正当化していくような内容のものは
あまり自分の好みではないということに気づかされました。
ただ、後世にも渡って読み続けられている名著というものには
この手の内容の小説が多いような気もします。
ある時点で主人公の内側で何かが崩れ去り、それと同時になにか確かなものが宿る、
そしてそれによって自己中心的な考えを固め、事に及ぶといったような内容。
理論の組み立て方、周りの人物との相互作用による主人公の心境の変化、
主人公のもつ特有の美意識、そして潜在的に存在する確固たる信念、
それらが評価され、様々な人々に議論の種を提供するということは理解できます。
しかし、どこか私にとってはそのような自己中心的な勝手な考えによって
自分の行為を正当化するということは幼稚であるように感じて、
そこに美しさや奥深さはあまり見出せません。
これはそれこそ個々の美的感覚によるものであるとも思うので、
人によって持つ感想は異なるでしょう。
私にもまだ洞察力が足りていないのかもしれません。
次に三島由紀夫の作品を読むのはもう少し先になるような気がしそうです。。。
う~ん、難しい。
ひとまずもう一度振り返って考え直してみたいと思います。
では今回はここまで。